初期貞子世代、平八です。
今夜は令和の時代によみがえったジャパニーズホラー「貞子4DX2D」のレビューです。
なんで前みたいに3Dじゃないんだ、とツッコミましたけどまあ色々あったんでしょう。
※本記事は内容についてのネタバレを70%くらい含みますので、視聴予定の方はご注意をお願いします。
公式サイト:
無慈悲な夜の女王・貞子
<あらすじ>
心理カウンセラー秋川茉優は過去の哀しい出来事を乗り越え、多少の問題を抱えつつも社会人として充実した生活を送っていた。
そんなある日、記憶喪失の少女が茉優の勤務する病院に運ばれてくる。
彼女はとある火災事故の生き残りであり、火をつけた張本人であると目される祖父江初子の娘だった。
そして茉優の弟・和真の身にも奇妙な出来事が起こり…
かなり久々に貞子を見ましたが「ああ、そうそう、貞子ってこういうとこある」と思い出しました。
自分の姿を見た者が女子供でも、どんなに色んなものを背負って健気に生きてても自分の仕事はきっちりこなす職人肌なところが。
もう二十年以上前になりますか、当時の私は鈴木光司先生の小説「リング」「らせん」にハマり、映画版も観に行きました。
で、その時感じた「こいつホント容赦ねえな…」という想いが鮮やかに蘇り、本作のあんなこっぴどいラストにも関わらずある種の清々しさすら感じたのです。
というか本作のヒロイン・秋川茉優さんが可哀想すぎて泣ける。
<秋川茉優の経歴>
・幼い頃に両親に捨てられて弟と二人で施設に入れられる。
・多分めっちゃ苦学して若くして心理カウンセラーになるも、サイコなクライアント・倉橋さんに執着される。
・弟和真(芸名ファンタスティックカズマ)が人気配信者になるとかほざいて学校を辞める。(しかも入学費は茉優持ち)
・イマイチ再生回数が伸びないことに焦ったカズマが火災事故現場に突撃取材をかけて、警察にこってり絞られその後行方不明になったことを知る。
・たったひとりの弟まで失いたくないと必死で探し続ける。
…大体劇中の中盤までの動向なんですが、物語のクライマックスはご自身の目で確かめて頂きたいのでぼかします。
正直、原作者か監督は茉優さんに何か恨みでもあるのかって思いました。
追い詰め方がエグいというか倉橋さんの精神攻撃と貞子出現がほぼ同時期に起きるので完全にキャパオーバーになってる。
貞子も貞子で、茉優さん今まで必死に頑張って来て定職も得てさあこれから、って人生を謳歌しようとしてるのに気にも留めないのよ。
芸名が絶妙にダサいファンタスティックカズマが弟だったってだけで全部台無し。
なんかジャパニーズホラーがどうこうじゃなくて人生の巡り合わせとか運命の風向きとかそっち方向に想いを馳せながら劇場を後にしましたね。
自分にも何か非があって辛い目に遭うならまだしも、自然災害とかそういうレベルの出来事だよなあって。
ホラーと4DXの親和性
ホラー文法に沿って活用される4DX効果はかなりマッチしてたと思います。
アメトーーク!のビビリ芸人の兄さんがたに体験して欲しいくらい。
フジモンさんとかめっちゃいいリアクションしてくれると思う。
私は別にそんな恐がりなつもりはないんですけど、上映中に二ヶ所ほど「ホワァッ!!」って言いそうになったところがあります。
折角なんで詳細は伏せますが、その場面で周りの空気が震えたので、一緒に観た方達も多分ビクッとなってたと思う。
それでひと呼吸置いて苦笑いというか照れ隠し気味にかすかに笑い声が聞こえて来ましたね。
分かる。
アレは本当にビビった。
あと感心したのは水しぶきの使い方。
ジャパニーズホラー独特のウェッティーなフィーリングを味わえます。
しかし名探偵ピカチュウの時も思いましたが水量時々思い切りが良すぎやしませんか。
「うっひゃ〜ビックリした〜やってくれるねぇ〜…ちょっと…ちょっと!」みたいなところもありましたので。
水しぶきカット機能はあまり使いたくないので今後も水をかぶることになりますが、どのくらいまでなら万人に受けるスプラッシュなのかは難しい問題ですね。
それと少し思ったのは、海辺のシーンとかで潮風の臭い効果があったら面白いかなって。
万人ウケする臭いじゃないからダメかな。
違法動画の配信ダメ、ゼッタイ
もしかしてこれが裏テーマなんじゃないかってくらい、カズマのせいで色々しっちゃかめっちゃか。
というか弟君のファンタスティックカズマがストリーミング配信者として食っていこうとするも再生回数一万越えが壁になってたり(ここらへん割とリアルな数字でなんかイヤでしたね)大衆の耳目を集めるためにもっと過激なことやろうとして警察沙汰になったり、見てはいけないものを見て貞子に目をつけられたりお前ちょっと大人しくしてろとヤキモキしてしまいます。
ただまあ彼のフォローをする(配信者だけに)ならば、火災現場に単身乗り込み実況する様はなかなか臨場感があって引き込まれました。
私らの年代だとハンディカメラでオカルト地帯へ潜入というコンセプトは「ブレアウィッチ・プロジェクト」を彷彿とさせますね。
さておき、カズマが危険地帯へ侵入する時にカメラを下に向けてぶら下げたりライトを点けるのに手間取ったり、いかにも手馴れてないヘッポコユーチューバーが撮った動画という変な生々しさが逆に本物っぽさの演出になってたと思います。
あそこはもう一回観たいくらい。
あと根っこは悪い人間ではないというか、多分実際にYouTubeで観たら居たたまれなくて俯いてしまいそうな顔芸も伏線があったり不思議な魅力があるキャラではありましたカズマ。
オールドファンサービスもあるでよ
ついさっきパンフレットで読んだんですけど貞子サーガって結構な頻度で出てるんですね。
海外版が3本出てるとか初めて知った。
私は小説「ループ」まで読んだ時点で満足してしまってそれ以来貞子とは距離を置いていたのですが、やっぱりテレビから貞子がうにょんと出て来るとテンション上がりましたね。
「これこれ!!」みたいな。
で、テレビから這い出て来たらそっからめっちゃ素早くて実際自分がやられたら怖すぎて漏らすと思うけど外から見てる分には笑っちゃう演出。
ところどころ「なんか面白い描写」が入ってるのは全部ガチでやったら怖すぎるからなのかとも思ったりします。
過去作の生き残りらしいクライアント・倉橋さんの最期とか「なんでやねん」て思いましたもの。
ちょっと遺体が面白い感じになってるじゃないですか。
あとはちょいちょいデジャヴなシーンあるなと思ったらわざわざ過去作から素材を持って来たようですね。(スタッフロールを観る限りでは)
まとめ
人類は貞子という暴力装置の前になすすべもない。
繰り返しになりますけど、忖度とか一切しないんですよね。
条件満たしたからヤるよ、みたいな。
情に訴えるのが一切通じないのが本当に怖いと思いました。
久方ぶりのホラー映画、おおむね楽しかったんですけど私結構細かい性格なので記憶喪失の少女の正体がよく分からなかったのが気になります。
何らかの能力(サイコメトラー的な?)を持ってるんだろうなというのは分かったんですけど何か普通にどっか行っちゃったんで続編でもないと謎のままですね。
大体貞子の生まれ変わりなら何で隣に貞子召喚できるんだよって無粋ながらツッコミました。