体型はプーさん寄りです、平八です。
今夜は「プーと大人になった僕」を観てきましたのでレビューします。
※本記事は割とネタバレしますので、未見の方はご注意下さい。
唸ってしまったラストの展開
いきなりなんですけど、「やられた」って思いました。
ちょっと恥ずかしい話なんですけど主人公・クリストファーの一発逆転アイデアがどういう意味で画期的だったのか気づいたのが映画が終わってトイレで用を足している最中だったのです。
「そうかこれ時代が違う」と。
ヒントはいっぱいあったにもかかわらず、です。
冒頭からクリストファーが100エーカーの森を離れ、大人になっていく姿がダイジェストで語られます。
その最中に大きな戦争を挟み、まだその爪跡が残っている時代であることは語られていました。
そのような状況では旅行は生活に余裕のある層に許されたレジャーだったのでしょう。
つまりクリストファー達は非常に狭いパイの中で堂々巡りに頭を悩ませていたわけです。
しかし私はその時代背景を鑑賞中すっかり失念していました。
そしてあたかもコスト削減のみに心を砕き、すっかり心を頑なにしていたクリストファーのように視野が狭くなっていたのです。
しまいには高揚するクリストファーと対照的に「このアイデアそんなにすごいか…?」と思ってしまう始末。
ジャイルズのこと笑えない。
劇中で繰り返し「何にもしないをすることが最高のものを運んでくる」と語られていたのに実践出来てなかった。
後から考えてみればエンディングテロップで不意に挿入される古めかしいバカンスシーンは「皆も心にゆとりを持って考えないと何も見えないぞ、ウフフ」と作り手に言われているようです。
プーさんの言ってることも初見では分かりにくかったし「何でバカンスしてるの君達」と思ってしまいました。
単なるノスタルジックなファンタジーではなく心に余裕があるかどうかを本作を通して推し測られたような心持ちになりましたね。
「何もしないをする」が普段から出来ている方なら気にならなかったかも知れませんが、どうやら私はその境地には達していなかったようです。
最近はゆったり暮らしているつもりなのにやっぱりジャパニーズビジネスマンの習い性が染みついてるのかな。
思ってたのとは違う感慨に打たれましたが、そうした自分の心のありように気づけたのは収穫でした。
プーと仲間達のアクションはもっと見たかった
前情報だけで「ああテッドの後追いか」と非常に失礼な感想を抱いたことを白状しますが、実際観てみると全くの別物。
本作が「頑張る大人達よ、本当に大切なものを見失ってないかね?」と語りかけるのに対しテッドは「いい加減自立しろこの野郎」と蹴飛ばすタイプでしたからね。
また、これは原作通りかも知れませんが「敵はお前の心の中にある」と言わんばかりのアクションシーンが展開されます。
具体的には一児の父でもあるクリストファーが奇声を上げながら地面を転げ回ったり殴打したりします。
字面だけだとポリスマンを呼びたくなりますね。
興味深かったのはプーさん以外のピグレット、ティガー、イーヨー、オウル、カンガとルーは大人になったクリストファーが全く分からなくなっていたのでやむなくクリストファーは上記のような大暴れをする必要がありました。
まあ人間でも数十年会ってなかった友人なんてそうそう見分けがつきませんので彼らの反応の方が当たり前と言えば当たり前なのですが、目を見ただけでクリストファーだと分かったプーさんの友情の深さを感じずにはおれません。
話を戻しますが、本作はクリストファーが自分の本心に気づくまでの過程に焦点が置かれているためアクションはそこまで多くありません。
クリストファーの娘であるマデリンと森の仲間達のロンドン大冒険が動的なクライマックスになります。
タクシー運転手との問答とか結構面白かったですけど、折角いいキャラした森の仲間達がロンドンに現れたのだからもっと激しいアクションが見たかった。
私がアクション映画好きなことも理由のひとつだと思いますが。
神秘的な100エーカーの森
パンフレット買って、実在する場所だと書かれていて驚きました。
クリストファーとプーさんが並んで語らう印象的な場面で眼前に広がる風景、あまりにパアッと開けて壮大なんでCGかと思った。
(余談ですけどラストでクリストファーが赤いベストを着ていたのが、プーさんとの友情が復活したのを暗に示しているようでいいなと思いました)
ギルズ・ラップと言うそうですがあんなに良い眺めなら一度行ってみたいですね。
実際イギリスに行ったことないので画面からの情報だけですが、こういう風土だとなんか妖精的な存在が信じられても不思議ではないかもなと思いました。
子供の頃を一緒に過ごしたクリストファーはともかく娘のマデリンも奥さんのイヴリンもちょっと戸惑っただけで普通に受け入れてたしね。
まとめ
忙しい日々でも大事なものを見失わないように。
そのためには、「何もしない」のは大事なことなのでしょう。
部屋の片付けでも「物を捨てることによって大切なものが見えて来るし新しいものを迎え入れられる」ということを本で読んだことがあります。
いつでもいっぱい詰め込んでパンパンに張りつめてたらいつか破裂する。
プーさんはそれを伝えるために何かに導かれてクリストファーの前に現れたのかも知れません。
パンフレットの人物紹介欄に「いつもハチミツのことばかり考えている」とややディスり気味に書かれていたのは気の毒でしたが。