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ハードボイルド外道漫画・野獣警察レビュー

  • 2017年11月25日
  • 2018年9月17日
  • 漫画

男は野獣、生きてる限り野獣。

 

往年の名フレーズをパクりました、平八です。

 

今夜の漫画レビューは野獣警察(原作:西塔紅一先生、劇画:みね武先生)です。

 

Kindleで本を物色中にタイトルとカバーに惹かれて購入(と言ってもUnlimitedなので月額980円以上はかかりません)し、全28巻、続編も含めると実に35巻の大ボリュームを一気に読破しました。

 

男と生まれたからにはこんな生き方もしてみたいものよのぉ、とつい道を外れそうになってしまう危うい漫画、そういった種類の作品です。

 

注意
この漫画は本当に人を選ぶため流血、残酷、性描写が苦手な方はご遠慮下さい。

 

普段から漫画ゴラクとかを愛読され、銃器で人が一山いくらで死んで行く世界観が許容出来るならこの先へお進み下さい。

 

全編を貫くエロカネバイオレンス

 

主人公は私立探偵・日暮掟。

 

聡明な皆様なら「警察じゃねえじゃん」といきなりツッコミが入ったことでしょう。

 

私もそう思います。

 

思うけど作家先生が付けたタイトルには逆らえません。

 

ひらにご容赦下さい。

 

 

24巻149Pより。まあご本人もこう仰っているので。

 

 

あらすじとしては金と女が大好きな日暮が闇でうごめく悪党どものトラブルに張り付いて甘い汁を吸おうとする話です。

 

その過程で銃撃戦が発生し「人の命を何だと思ってやがる」と言いたくなるくらい死にます。

 

主人公のキャラクターとしては

 

・女好き
・銃器のエキスパート
・決める時は決めるタフガイ

 

こう書くと往年のジャンプ漫画シティーハンターに何となく似てますね。

しかし骨子の部分が似ていても肉付けがだいぶ違うので作品としてはまるで別物になっています。

 

あの冴羽獠も最初の頃は普通にコロシもしてましたが、少年誌というフィールドではいい顔されなかったのか次第にもっこり美女のボディーガード方面にシフトしていきましたね。

 

今では男性キャラが股間を屹立させる表現も憚られる時代のようで、難しいことです。

 

話が脱線しましたが、日暮は実に欲望に忠実で、そのくせコミカルな面もあるので何やかやで憎めない男です。

 

ただまあどうしても色々許容できる大人向けのキャラなので、もし未成年がこの漫画を読もうとしたら止めた方がよいでしょうね。

 

 

大体30ページで事件解決

 

このテンポの良さって割と重要だと思います。

 

たとえばラーメン屋に掲載されてる雑誌が置いてて何気なく客が手に取り、野獣警察を読み進めると店を出るまでには決着がついてるという親切設計です。

 

次に手に取ってもらえる保証はないし、よしんば同じ雑誌を読まれたとしても続き物にしてしまったら全然違う号の可能性もあり得るからです。

 

タイトルもインパクト満点ですし、当時はそういったところまで考慮して物語を組み立てていたのではないでしょうか。

確か一回だけ前後編ものがあったと思います。残念ながらどうも80年代初頭の作品のようでどこで連載していたかは分かりませんでした。

 

反面、オチ付近が性急になることが多いというか足早に解決するエピソードも割と見られます。

 

たとえば日暮も無敵の超人ではありませんので敵役に翻弄され或いは半殺しの目にあわせられる回がしばしば見られます。

 

監禁され屈辱を受ける日暮。

 

この窮地をどうやって切り抜ける?

 

読者の期待は高まります。

 

そして暗転。

 

なんか普通に解放されてて数日後普通に仕返しします。

 

その際、日暮怒りの機銃掃射を受けて残り3ページくらいで敵役は全滅します。

 

「え…ええ…?」と理解が追いつかないまま何事もなかったかのように日暮が一言添えて物語は終わります。

※無人島で気力と闘争心の回復を待つというエピソードがあるので、毎回こういうことやってると思うことにしましょう。

 

色々あったけど最終的には鉛の玉で解決。

 

ある意味起承転

 

全35巻読んでる最中に何度か「うん、まぁ君がそれでよければみたいな気持ちになりました。

 

ハードボイルドときどきコメディ

 

大義も無く、まず事件が起こったらカネになるかどうかを考える主人公なのでそこが受け付けない方もいるでしょう。

 

そんな彼も心の奥底では虚無を抱え、心許せる者を求めてさすらうような一面を見せたりします。

 

これが普段の品性のかけらもない振る舞いからは想像も出来なくていわゆるギャップ萌えが発生します。

 

特に好きな回は20巻の第4話「腐った離婚ゲーム」ですね。

 

この回は幼い頃から貧しさに苦労し、成長してやっと大金を掴んだ流行歌手が離婚問題の解決を日暮に依頼し、その最中で日暮は彼の寂しさに触れます。

 

 

20巻114P。手作りのカツ丼談義。

 

 

彼の過去を知り、友人になりたいと願う日暮の想い。

 

まるで普段の彼とは別人のようにセンチメンタルな一面を見せます。

 

「何だよ普通にカッコいいところも描けるんじゃん」と貸本屋の頃からご活躍されていた大先輩の作家先生に対し失礼すぎる感想が出たりもしました。

 

 

 

 

前回の神様はサウスポーレビューの時も思ったのですが、漫画を読む上でキャラが好きになれるかどうかってすごく重要ですね。

 

別に日暮掟のようになりたいとはあまり思わないのですが、私が好きな彼の思想として「俺が普通の家庭を持って普通の幸せを掴んだりしたら、俺が殺した奴らが浮かばれねえ(セリフはうろ覚え)」というものがあります。

 

ああ、普段はどうしようもなく見えるけどちゃんとしてるなって。

 

いや社会的なモラルから考えるとちゃんとはしてないんですが、破天荒に思えて自分を律する何かは心の内に秘めているんだと気付かされます。

 

あと未成年には絶対手を出さず、少女の命の恩人になっても「あと何年かしてどこかで出会ったらやらせてくれや」粋なジョークを飛ばしたりします。

 

自分で書いててこれはアリなのかと少々疑問でしたが少女も満更ではなさそうだったので外野が口を挟むことではないでしょう。

 

最終回にはあまり期待しないで

 

以前ツイッターの方で

 

 

と大人げなく激昂しましたが、全28巻のこの漫画、最終回はお茶漬けみたいにサラッと終わります。

 

個人的に気になってたのは敵役であり互いに惹かれ合う関係でもあった女性刑事とのロマンスがどう決着するのかというところでしたが、その辺特に一線越えることもなくまるで来週も見てね的に終わりました。

 

しかし冒頭でも書きましたが本作は続編として「新・野獣警察」があり、当時の雑誌や連載状況は知りませんのでなるほど新装開店したからオチがアッサリしてたのだなと推測しました。

 

新の方もビックリするほどいつも通りに終わりました。

 

 

セックスマネーバイオレンスを許容できるかどうかがカギ

 

繰り返しますがセックスマネーバイオレンスそして虚無が肌に合わない方には全くもってオススメしません。

 

肌荒れします。

 

逆にと言うか、日常生活において自分は抑圧されてると感じる方にはとんでもなく合ってしまう可能性もあります。

 

とにかく自分の欲望にストレートな娯楽作なので。

 

時代背景が40年近く昔だったりするので色々と現代にそぐわない描写もあるにはありますが、法で裁けぬ巨悪に野獣が立ち向かうというのは時代を超えて喝采を受けるエンターテイメントではないでしょうか。

 

ただ、自分の身内が「俺も将来野獣になる!」とかほざいたら頭が後ろにぶん回るくらいの勢いで殴ってでも止めますけどね。

 

ああいう生き方は体がいくつあっても足りませんわ。

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