スリラー物も割と好き、平八です。
今夜は最近サスペンスでもあまり見ない気がするから新鮮だった多重人格もの「ジョナサン ふたつの顔の男」のレビューです。
公式サイト:
※本記事は作品の特性上ネタバレに出来るだけ配慮したつもりですが、もしかしてピンと来るところがあるかも知れないので未見の方はご注意下さい。
時間が経つのが怖いサスペンスもの
だって夜になるのは避けようがないものな。
自分の制御が確実に効かなくなる時間が来るってどんな気持ちなんだろう。
些細なことがきっかけで状況がじわじわと切迫し、あの少しずつ喉を絞られて息苦しくなっていく感覚を味わうとまさに本作はサスペンス映画なのだと思わされます。
恥ずかしながらこの中年も視聴中何度かビクッとなりました。
次の朝が来るのが怖くて。
最初は暗転する効果をありきたりなものだと思ったんですけど状況が進行するにつれてどんどん闇が恐怖になっていくんですね。
本作は夜の人格ジョンがルールを破ったことに昼の人格ジョナサンが怒りや嫉妬を覚えたことに端を発しているのですが(ジョンの思考の流れを追体験させたのが巧みだと思いました)遅かれ早かれああなっていたのでは、と思えます。
ただ夜のジョーがほんの少し早熟だっただけで。
なんでも分かり合っている兄弟のように思えても人はそれぞれの歩幅で大人になって行くし、それを押しとどめることは誰にも出来ないという、そうしたテーマもあるのかなと感じました。
人格が成熟する過程でウソのひとつもつきたくなりますしね。
皆さんもウソをついたことくらい(あるいは決まりの悪いことを黙っていたくなることくらい)経験してらっしゃると思いますが、そういう心情描写がやたら細かいので視聴中は心臓をゆっくり握られてるような辛さを味わいました。
詳細は申しませんが「あー!でも、おまっ、ああー!!」と頭を抱える一幕もありましたね。
それやっちゃったらもう後戻り出来ねえだろ的な。
自分と重ね合わせて観ると胸のざわざわがすごかったですよあのシーン。
彼らの心情の揺らぎを自分のものとして受け取ると没入感がかなり高まりました。
言いたくないことをどうしても言わなきゃいけない瞬間ってあるよな…って。
私の好きなタイプの映画
アイデアによる一点突破ものが好きなんですよ。
お金がかかってなさそうならなおいい。
(本当にかかってないかどうかはさておき)
古くは「メメント」とか「ブレアウィッチプロジェクト」とかね。
本作もヒロインのエレナ(スーキー・ウォーターハウス)がかなりの別嬪さんだったのでキャストには予算取ってそうと思いましたが、それ以外はそんなにお金かかってなさそうで好感が持てました。
(くどいようですがお金かかってなさそう感が好きなのです)
というかスーキー・ウォーターハウスってこの前観た名探偵ピカチュウにも秘書役で出てたらしくて「マジか、気づかなかった」となりました。
今後ちょっと気にしていきたい女優さんでしたね。
名探偵ピカチュウのレビューはこちら(↓)
あと、個人的には「人格の入れ替わり」についても伏せておいた方が良かったんじゃないかと思いました。
というのも前情報として知っていたために「ああ今それをやってるんだな」というのが見当がついてしまうため、せっかく尺をとってジョナサンの生活を描写しているのに意識が次の展開に向いてしまったからです。
とはいえ「じゃあこの映画どうやって宣伝する?どこの場面を切り取って映画館とかで流す予告編作る?」と問われると返答に詰まるので、やっぱり興味を引くためにそこをピックアップせざるを得なかったのかなと。
ラストについて語りたいけど…
これは…あかんやつや…
「あのラストをどう解釈するかはご想像にお任せしますよ」と投げて来られたからにはまず各人で考えないと…
正直あのラストはもう一回観たい。
まさかあそこでああなるとは思ってなかったのでちょっとボケッと観てたんですけど、彼の行動が自分の考えと合ってるかどうか確かめたい。
そしてジョナサンあるある早く言いたい。(RGノリに乗せて)
ご安心下さい。
あの息苦しさを体感して頂きたいのでこれ以上は申しません。
これからどのくらいロードショーするかも分かりませんけど、もし上映期間に間に合わなくても将来配信とか映像ソフトになった時に前情報なしにご覧頂ければと思います。
おもしろジョナサンポスター
私が観に行ったのは新宿シネマカリテです。
地下に映画館があるという、自分は今まで経験したことがなかったタイプでした。
スクリーンも少々小ぶりで古き良きミニシアターの雰囲気を漂わせていましたね。
で、面白かったのがジョナサン立て看ポスター。
これが、フラッシュをたいて撮影するとジョンが現れる。
いや、面白い仕掛けだけどもどうなってんのこれの仕組み。
ちょっと後ろがつかえてたのでちゃんと確認することは出来ませんでしたが不思議な看板でした。
まとめ
人の心の謎を解き明かすには人生は短く、我々は分かり合えないのかも知れない。
これ以上なく近しい存在だったはずのふたりの絆がすれ違い歯車が狂っていく姿はかなりの緊張感をもって迫ってきました。
繰り返しになりますけど、やっぱりラストシーンの描写はもう一回観たいですね。
色々思い返すとなんか切ないんですよね。