最近体力の衰えをとみに感じます、平八です。
今夜は本当は戦いたくないけど悪い奴らを見たらもうダメ…
有賀照人先生作「舞って!セーラー服騎士」のレビューです。
悩める変身ヒロイン活劇
〈あらすじ〉
星野(ひかりの)舞子はプロレスラーの両親の間に生まれ、幼い頃から英才教育を受ける。
その甲斐あって強靭な肉体と正しい心を合わせ持つ女学生に成長したが、本人は喧嘩っ早い性格を直したいと苦悩する。
邪悪と陰謀渦巻く三ヵ月学園に、今日もセーラー服騎士のチャクラムが炸裂する。
少し前から何となく読み返したくなって探してましたが、この前立ち寄った古本屋で全2巻ゲットしました。
流石に30年前の作品なので今の価値観とはそぐわないところもあります。
(学園の生徒かどうか分からない不審者が校内うろついてたら問題になるだろ、とか)
しかし現代の視点で全てを語るのもナンセンスなのでこれ以上は申しません。
大事なのは強大なパワーを手に入れた繊細な乙女が平凡に生きたいと苦悩する姿が描かれていることです。
常日頃から10キロの箸と50キロの茶碗で食事をする変態一家で育ったがために不釣り合いな力を身につけた舞子は「普通の女の子になりたい」「正体がバレて嫁の貰い手がなくなったら困る」と悩み自体は実に可愛らしいものです。
しかし悪が横行するさまを見ると怒りが湧き上がり、彼らを懲らしめる存在として、いつしか本人の意図とは裏腹に学園のヒーローに祭り上げられる。
お約束ながら、物語のテンポがいいことと舞子が邪気なく可愛いのでスルスルと読めます。
悩みが等身大というか思考回路が常人に近いので共感を得やすいのかも知れません。
また、当時面白い仕掛けだなと思ったのはチャクラムというインドで使われていた武器を愛用していた点なのですが、セーラー服騎士以降はベルセルクの敵役が使ってたのを見たくらいで私は他には知りません。
やっぱり刃を削ってないと刺さったら死にそうですしね。
あと一巻に収録された一回限りの特殊変身である「ブルマー騎士」のインパクトは字面も相まってなかなかのものなので、手に取る機会があれば是非ご覧頂きたい。
もうセーラー服関係ないやんけ、とツッコんだ私と同じ心境を体験してほしい。
幼なじみとの微妙な関係
力は持ってるけど出来れば発揮せずに何事もなく過ごしたい舞子と、正義感は売るほどあるけど喧嘩は三級品の幼なじみ辰也のじれったい関係。
青春の懐かしさと甘酸っぱさで胸いっぱい。
このふたりの間柄が殺伐とした舞台設定に潤いを与えているとも感じます。
後述しますけど「どんだけ悪役いるんだよ」ってぐらい不良グループが学園に跋扈してて誰かが戦わないといけない状況なんですね。
辰也に舞子の力が備わっていたならば、迷いなく正義を行使するヒーローものになっていたかと思うのですが世の中とはままならないものです。
そしてそうした世紀末感あふれる世界観で無意識にイチャつく幼なじみカップルが癒しになっていたことも否めません。
で、私がこの作品で一番好きなのは実は本作のラストシーンで、細部をほとんど忘れていたにも関わらずここだけは覚えてました。
セーラー服騎士の決め台詞「駄駄ってんじゃねーよ!!」を巧くアレンジしてロマンティックなラストに仕上げたのがとても印象的でした。
大体普段は大男を蹴り上げる時に使ってましたからね。
あと、これは再読していて気づいたのですが舞子は髪のハイライトで感情表現をします。
斬新だよ有賀先生。
むろんラストシーンでもこのハイライトが使用されているので、舞子の気持ちの高ぶりが読者にも察せられる妙手となっています。
瞳にハートどころじゃない大きさ。
問題児が売るほどいる学園
根性悪い学園のアイドル。
その彼氏の巨漢番長。
悪の風紀委員。
セーラー服騎士の情報を不良に売る生徒会長候補。
デリカシー皆無の筋肉教師とウェイトリフティング部。
弱いけど金は持ってるボンボン不良。
根性悪い女子陸上部のエース。
なぜか最終エピソードまで待機してた総番。
イヤだよこんな学園!
なんで番長倒した時点で総番が出て来ないのかも気になるけど、不良めっちゃ多い。
一応ラストで総番をシメたので「これからはセーラー服騎士の活躍も減るかな…」と幼なじみカップルで語り合ってましたけど多分そんなことないと思う。
裏の番長、暗黒総番、悪の生徒会長がセーラー服騎士の首を狙ってるぜ!
まとめ
戦うことに葛藤のあるヒロインが好き。
今時ではもう流行らないのかな、と思いつつも正義を行使することに迷いのない主人公像とはまた違った魅力に惹かれますね。
本作を探していて知ったのですが、どうやらセーラー服騎士には有賀先生が後年描いた別バージョンがあるようです。
本記事を記した時点で手元にありませんので続編なのかリブートなのかもはっきりしない状況ですが、入手出来たらその時は追加レビューをしたいと思います。