ゴッドサイダーとかホントもう多感な時期直撃作品。平八です。
今夜は妖しい画力とストーリー展開でいたいけな少年ジャンプ読者を魅了した巻来功士先生の描きおろし作品「連載終了! 少年ジャンプ黄金期の舞台裏」のレビューです。
(しかしなんちゅうタイトルだ)
※本記事は初っ端からネタバレを含みますので未読の方はご注意下さい。
鶏口となるも牛後となるなかれ
それが正しかったのかどうかは分からない。
でも本作で巻来先生が一番言いたかったことってこれなんじゃないかと思っています。
本作では巻来先生には人間ボディと鶏ボディで登場しています。
おそらくは鶏の方がイメージ映像だと思いますが(そりゃそうだろ)この鶏はあまりいいようには扱われません。
同期にして黄金期ジャンプ作家陣を大空を行く鳥に見立てる時も巻来先生はその鶏ボディのため、彼らについて行くことが出来ずにひとしきり羽ばたこうとした後、地面をほじくり返す作業に戻るのです。
高く飛べない鶏は自虐の意味もあるのでしょう。
しかし本作で垣間見られたように巻来先生は反骨精神を秘めてマンガ道を歩んでこられました。
俺はひとりでもやれる、サラリーマンのような作家にはならない、モテることがそんなに偉いのか!(最後違いました)
一時はジャンプ作家として活躍しながらも何かに突き動かされるように飛び出してしまった鶏。
その姿は大勢の一部となって安穏として生きるよりも、たったひとりでも自分の道を歩んで行きたいという意志の表れだったと思うのです。
しかし本作はそんな自身のありようを過度に美化しない作風なのが好感が持てました。
有頂天になり、ある種傲慢だった若かりし頃や不遇の時期に周りに抱いた感情を出来るだけ客観的に描くスタイル。
だからと言ってジャンプのあり方を否定するものではありません。
巻来先生も傑作は担当との二人三脚の中から生まれることを認めてらっしゃいますしね。
ジャンプの正しさを認めながらも違う道を選んだ自分。
「あの時代はああだった、俺はこう生きた、キミならどうする?」という問いかけのようにも本作は思えるのです。
好きです、ジャンプ連載作品群
メタルK、ゴッドサイダー、ザ・グリーンアイズ読んでましたね。
いずれもKindle Unlimited等で読めるいい時代になりましたので、私と同世代のあなた、時には昔を振り返ってみませんか。
さておき、当時はまだいたいけな子供でしたので、「メタルK」の必然性のあるヌードにドギマギさせられつつも目が離せなかった記憶があります。
話の最後の方になったら内部の金属骨格まで大サービスで魅せてくれるおケイさんには本当にビックリさせられました。
というか私が初めて読んだのは「狩りが好きなおばさんを懲らしめる」回で、その扉絵がいきなりおケイさんのフルヌードだったんですけど、アオリ文句が「狐狩りはとっても素敵さ…生きて帰れたらね(うろ覚え)」で二重に戸惑いましたね。
なんで俺漫画読んでただけなのに脅かされてるの…?ていう。
しかし数十年前の絵がスッと思い浮かぶあたり、私の人格形成にも深い影響を及ぼしているのでしょう。
あと主人公より年上のヒロインが好きなのはおそらく「ゴッドサイダー」の流璃子のせい。
巻来先生には色々と捻じ曲げられています。
この二作について、メタルKは尻上がりに人気が上がっていったが打ち切り、ゴッドサイダーは同じホラーバトルものの「ジョジョの奇妙な冒険」と一騎討ちになって敗れたというようにかなり赤裸々に語られています。
「ザ・グリーンアイズ」も思うように人気が取れずに全3巻で終了したとも。
確かにジャンプ基準で言えば短命に終わった作品ですけどこの作品には私の心に楔を打ち込んだ要素が多々あります。
具体的には「ヒロインがジャングルを歩き回って汗かいたから水浴びする」という必然性のあるヌード。
これが第一話から来る。
スゴい。(語彙が貧困になる)
そしてライバルキャラとして出て来るサソリの因子を打ち込まれた強化人間兄妹、その妹である刺江ちゃんのえげつないファッションセンス。
実際にご覧頂きたいので詳しくは申しませんが、当時はここまでやっても集英社から止められなかったという貴重な資料なのかも知れません。
「連載終了!」内でも他作家に対抗すべく最強のライバルキャラを作る!と発奮するシーンがありますが、まさか先生それは刺江ちゃんのことではないでしょうね?
「ザ・グリーンアイズ」のレビューはこちら。
前述の通りKindle Unlimitedでは月額980円でここに挙げた作品の他「ミキストリ」シリーズも読めますので、是非ご一読下さい。
ちなみに刺江ちゃん初登場は2巻ですのでご注意下さい。
下記リンクは何故か2巻のリンクが作成できなかったので、仮に3巻のリンクを貼っています。
もしも巻来先生がコロコロに連載していたら…
巻来先生は元々ジャンプを志していたわけではなくふりだしは少年キング、そして学生時代に既に少年サンデーに声をかけられていたことが明かされます。
若干不義理のような形でサンデーを袖にするも、「せっかくだからコロコロも見てみる?」とコロコロ編集部に通されるくだりがあります。
結局コロコロのシステムに馴染めそうもないと断るのですが、もしあの時コロコロで描く道を選んでいたらどうなっていたでしょう。
時期はちょっとズレますけど「ザ・ゴリラ」や「鉄戦士ムサシ」のような作風も受け入れられる土壌なので、案外作品自体は馴染めたんじゃないかと思います。
児童の心に爪跡をザックリ残すような怪作を読めた可能性もあったのですね。
ただ、コロコロは編集部のすぐ隣に共同作業部屋があって
・ネームを書き上げたら編集者にすぐチェックしてもらえる
・自分の作品が終わったら他の作家の手伝いをする
という独自のスタイルが確立されており、巻来先生ご自身が拒否反応を示してらっしゃいましたので実現はしなかっただろうなと思います。
また本編には「とどろけ!一番」近年では「コロコロ創刊伝説」で現役活動中の、のむらしんぼ先生も数ページ登場しており漫画家同士の奇縁を垣間見ることが出来ます。
まとめ
己が道を突き進むとはかくも険しい。
しかし子供の頃読んで衝撃を受けた作品群の裏側を覗けたような気がして読み物としても満足できました。
あとがきは堀江信彦さん(巻来先生の元担当者。後に少年ジャンプ、コミックバンチ、コミックゼノンの編集長も務めた)との対談になっていて、本編で巻来先生が編集者に抱いていた不満の正体の一端が明かされます。
ゆえに最後の方文字ばっかですけど読み進めることをご推奨します。
堀江さんが長い編集者人生で得たノウハウや気づきも話されており、興味深い内容でした。