多感な時期にコミックコンプとか読んでました、平八です。
今夜は過激な男同士の友情を描いたヒーローもの「友情の男 アミーゴマン」のレビューです。
世界は決して君を嫌ったりしない!!
〈あらすじ〉
愛なき時代に生きる人々の前に突如現れた友情推しの男・アミーゴマン。
この物語は彼と仲間達の熱い魂の交流を描いたドラマである。
もう30年以上昔になりますか、マニア向け漫画でおなじみ月刊コミックコンプに掲載されていた変身ヒーローギャグマンガです。
濃い絵柄、ともすれば禁断の愛一歩手前まで踏み込んだ内容、時代を感じるアニメパロディ等々人を選ぶ箇所もちょいちょいあります。
ただ、男同士の友情を高らかにうたい上げるビビッドな世界観とキレのあるネームセンスは結構クセになるので、とりあえず軽い気持ちでページをめくって取り返しのつかないことになってみるのもいいのではないでしょうか。(よくねえよ)
この記事の見出しにも使わせて頂いた「世界は決して君を嫌ったりしない」のようになかなかグッとくる熱い台詞もあるので気分を盛り上げたい時に読みたくなる漫画です。
もろ出しの魂の叫びを見よ
「おひとりさま」という概念が発達した今ではだいぶ薄れて来てはいますが、平成初期の頃は「友達がいない」とか「ひとり行動」というのはある種の恥ずかしさを感じる類のものでした。
それは私自身が若かったため周りの目を過剰に気にしていたこともあるかも知れません。
そんな折、おそらくは作者のこにししのぶ先生がモデルと思われる作家の懊悩を描いたエピソードがあります。
未読の方のためにご説明しますと漫画家デビューを果たした青年が友人に自慢しようとするが友達がいないことに気づき絶叫、それならばと同人誌を一緒に作った仲間の電話番号を奥付から調べて電話するも一刀両断されて絶望、エロ漫画を描いて青少年達を平伏させると野望を抱くも女の裸を描いたことががないのに気づき悶絶。
最終的にどこからか現れたアミーゴマンに丸め込まれて課長のケツを描くことを決意し大団円。
まあアミーゴマンと課長のケツ云々は置いておいて、当時のコミックコンプがSF、ファンタジー、ファンタジー、戦国ファンタジー、ファンタジー、ヤンキー、またファンタジー…と言ったラインナップの中、こんな生々しいものを描く方も載せる方もすげぇと今更ながらに思います。
同人誌の奥付で知人の住所電話番号を調べるとか若い方なら「え…何それ…怖…」と感じたのではないでしょうか。
しかしそこは些細な問題で、孤独を抱えた人間が魂をかき乱される様をほんの数ページに凝縮されていてしかもそれが読んでて面白みを感じるレベルに昇華されてる点を指摘したいのです。
あくまで想像ですので私の思い込みもありますが、こにし先生が創作活動をされる中で起きた実体験と葛藤が元になった回なのではないかと。
友情の男、を描く上では孤独を描く必要もあると考えた末の決断だったのかも知れませんが、この回に私は勇気づけられました。
「あ、俺友達少なくてもいいんだ」と。
人間は同じような悩みを抱えている。
当たり前と言えば当たり前のことなのですが、思い詰めて視野が狭くなると自分ひとりが世界で悩みと向き合っている感覚に陥るものです。
今となっては誇大妄想だと理解していますが、世の中の人間全てが他人とうまくやっているのに自分だけがそう出来ない、という。
そんな時に全国誌で(フィクションとはいえ)「友達いねーぜ!!」と主張するこにし先生に清々しさと頼もしさを感じました。
余談ですが本作のラストページのスタッフロールはこにし先生一人親方状態で「孤独」の文字で締められているのですが「こにし先生まさか本当に…いや、よそう」と若干目を逸らしがちになりました。
脇を固める魅力的なキャラ
アミーゴマンはショートエピソードが多いため綺羅星のごとくキャラクター達がおり、私的には特に3人のキャラが印象深いです。
・キライダーG7
・チョップおじさん
・ラガーマン達
中でもアミーゴマンのアンチテーゼとして生み出されたキライダーG7はいいですね。
名前の語呂が良くて最高。
わざわざ年賀状で「嫌いだ」と煽ってくる律儀なところも神経質そうなルックスと相まって良キャラだったと思います。
チョップおじさんは通行人にいきなりチョップを浴びせてくるポリス案件だしラガーマン達は根はいい連中だけど力の加減を知らなかったり個性的なキャラ揃い。
特にラガーマンは私が初めてコンプ本誌でアミーゴマンを見つけた時のゲストなので非常に思い出深いですね。
手短にストーリーを話しますと、過酷な練習の後のコーラをどちらが飲むかで揉めたラガーマンふたりが死闘の末アミーゴマンに口移しでコーラを飲ませてもらうという衝撃的かつ地獄のような内容で約30年経った今でも鮮烈に焼き付いています。
他にもこにし先生渾身のネームドキャラが沢山登場しますので是非読んで頂きたいところ。
でも流石に相当昔の作品だから単行本も読む機会が…と思っていた矢先。
令和に復活!みたび帰って来たアミーゴマン
もしかして今って昭和95年なんじゃないだろうかと初報を聞いた時に思いました。
終わらない昭和的な。
まあ順を追って考えればあの頃アミーゴマンに魅せられた少年が長じて決定権のある立場になり「この作品をもう一度世に問いたい」と使命に燃えたのではないかと考えられますね。
やってくれるじゃねえか。
内容はコミックコンプ版のアミーゴマンに加え、一時期復活した「アミーゴマンリターンズ」を収録した完全版とのこと。
アミーゴマンリターンズは不勉強にして未読なので、今から楽しみです。
(追記)完全版購入しました
なんか角川書店ものすごく頑張ってるというか紙質がなんかすごくいいし大きめなので読みやすいしコンプコミックス版カバーイラストもカラー収録という充実の内容でした。
ただ惜しむらくは「多分当時だったらOKだった」アニメの名称やキャラ名が伏せ字になっており、時代の流れに思いを馳せます。
(その割にはコミックコンプ漫画とコラボはそのまま残ってるし、あみちゃんは平仮名ならオッケーなんだという基準がちょっと分からないところもありましたが)
あとがきでは令和のこにし先生の近況とか色々読めて得した気分になれます。
しかしアミーゴマンリターンズってかなり女子キャラの割合増やしててそこでも時代の流れを感じました。