シャドー!!に憧れました、平八です。
行って来ました「山根青鬼画業70周年記念展」、その訪問手記です。
情報:
開催場所:森下文化センター 1階
(〒135-0004 東京都江東区森下3-12-17)
開催期間:2019年11月30日(土)~12月22日(日)
開場時間:9:00~21:00
入場料金:無料
14歳の時に作家デビュー
流石にこの情報は二度見した。
いやまあ2019年現在で御年84歳、画業70周年ということは計算上は合ってるけど…にわかに信じがたい話。
しかし現地で当時の新聞記事や年季の入った生原稿の数々を見るとそれが真実であることを私のような(比較的)若い読者に教えてくれます。
コロコロコミックに載ってた「名たんていカゲマン」読んでた世代ですからね。
アイムヤングマン。
そして展示原稿はいつ描かれたものか年号で記載されているので「今昭和何年だっけ…」とパッと出て来なくて戸惑う場面もありつつ悠久の時を越えてきた作品を前に思わず姿勢を正します。
ただ、展示会に飾られた作品は「まあ気楽に見ていきなさいよ」と語りかけて来るかのようなギャグ・ナンセンス・ウッカリチャッカリ漫画が多く自然と顔もほころびます。
年表を見るに、最初期は児童誌での活躍が主だったようで、ものすごく直球な作品をいくつも拝見しました。
よく肥えた男児が活躍する「デブ太くん」とか「そのまんまじゃねーか!!」と大作家に時を超えてツッコんでしまう一面もありましたが。
他にも「ウーマン・ブス」など野球に換算すれば160km/h台の剛速球タイトルの作品もあり、山根先生の力強さに気圧されます。
展示されてたのは表紙だけだったのですが、多分ブスが大暴れする漫画だと思います。
あと印象に残ったのが「はらたちカッカ」という、主人公が常にキレ散らかしてるタイトルからして暗雲立ち込めるコメディも描かれていて、こういうどストレートの分かりやすさというのは今も昔も求められるものなのかなと考えさせられました。
しかし頂いた創作年表見てると本当に色んな雑誌に描かれていてそのエネルギッシュな創作意欲にため息がもれましたね。
私が子供の頃に読んでた「名たんていカゲマン」は先生の画業の中でほんの一部だったんだと思うと不思議な気持ちになります。
多分山根作品だと知らずに読んでたのもいくつもあったと思う。
そしてエントランスには交流がある各作家先生から贈られた色紙が飾られているのですが、70年も画業続けてらっしゃると本当に交流の幅が広いようで永野のり子先生とのむらしんぼ先生の色紙が並んでるのはなかなか驚きでした。
それ以外にも一本木蛮先生や柳生柳先生の色気のある色紙、ちばてつや先生や里中美智子先生など大御所作家の風格漂う多数の色紙も見どころのひとつかと思いますので是非現地で確かめてみて下さい。
読者の欲求に応えていくスタイル
展示されている作品は表紙から数ページまで、というものが多くあくまで私の予想ではあるのですが読者が求めているものをベタに叶えていくことをひとつの課題にされていたのではないかと展示物を見ながら思いました。
たとえば「ゲリラくん」という名前からしてヤベエのがあり、それは挑発的なタイトルとは裏腹に教師達に抑圧される子供達を救うかのような内容でした。
これは自分の子供時代を思い返しても容易に想像がつきますけど高圧的な先生方を向こうに回して奮戦するゲリラくんに当時の子供達は快哉を叫んだのではないでしょうか。
それにしたってゲリラくんはデンジャラスすぎやしないかと思いますが。
また私のアンテナにビビッと引っかかって来たのが「おやじバンザイ」。
こちらの展示は「おわん亭ボインちゃん登場」回の表紙で、おそらくは「どうにもエッチな漫画が読みたい」といういたいけな青少年の欲求に応えたものだと推測します。
ごまんとあるはずの生原稿からあえてコレをセレクトした青鬼先生の意図も聞いてみたいところですが。
絶対これエロい回じゃんと思いながら表紙を拝見させて頂きました。
1989年、のらくろの執筆権を継承
青鬼先生の師匠であり「のらくろ」の産みの親である田河水泡先生は既に鬼籍に入られています。
しかし、のらくろを受け継いでいきたいと考えた田河先生は生前に見込みありと認めた3人の弟子にのらくろを描く権利すなわち「執筆権」を託しました。
その弟子こそ永田竹丸先生、山根赤鬼先生、そして山根青鬼先生です。
(※青鬼先生の双子の弟である赤鬼先生は他界されています)
よってのらくろ館が常設されている森下文化センターにて画業70周年展が開催されたのは当然の帰結とも言えます。
森下文化センターがある商店街ものらくろの旗がたなびき地元に密着して息づいていましたね。
のらくろ館は同じ1階フロアにありますのでそちらも拝見しましたが思っていたよりも風刺のきいた内容だったというか、「いいな」と思ったのは「幸運もあって数々の勲章を手に入れるも『こんなもんで腹が膨れるかよ』とひとりごちるのらくろ」ですね。
時代を考えると描いてよかったんだろうかと心配になります。
その後も世情の成り行きというか戦争が激化する頃はのらくろが描けなかった(内容どうこうではなく印刷用紙の節約というひっ迫した理由だったとか)など時代の荒波にもまれながらも現代まで遂にその姿を残したと考えると感慨深いものがありますね。
もっとも私は当時のことを知るよしもなく、人づてに話を聞いたりのらくろの孫が活躍するアニメを観ていた世代なのですが。
森下文化センター・プチ情報
初めて森下文化センター行ったのですが、漫画読みには超いい所です。
のらくろ館の横には多数の漫画が収められた本棚とスペースがあって、腰かけてゆっくり読める机と椅子があり、無料。
(当然ながら飲食したり騒ぐのはNG)
時間の都合でほんの少ししか滞在できませんでしたが辞典みたいな厚さの「名たんていカゲマン」コミックスがあって「なっつかしー!!」と思いながら一部読ませて頂きました。
子供の頃好きだった「でけえルービックキューブが財宝の鍵になってて怪人19面相としのぎを削る」回を探し当てられなかったのは残念ですが「マイクロフィルムがパン工場に紛れてしまい、見つけるためにパン全部食う」回が30数年ぶりくらいに読めて満足です。
ていうか「19面相以外にもライバルキャラいたんだ…?でもここに描かれてるならいたんだろうな…」と不思議な気分を味わいました。
19面相がインパクト強すぎてな…
それ以外にも「パンク・ポンク」や「サルまん」の最初のワイド版、「ポーの一族」のように様々なジャンルが揃ってますので一度迷い込んだらうっかり読みふけってしまうことうけあいです。
青鬼先生、いつまでもご健勝で
会期中、毎週日曜の14:00~15:00は山根先生のサイン会が開催されるとのこと。
それ以外にも2019年12月8日(日)17:00からは山根先生、のむらしんぼ先生、岸田尚先生のトークショーが開催予定なのでご興味のある方は足を運ばれてはいかがでしょうか。
しんぼ先生はやっぱりコロコロつながりなのかなと思うと往年のコロコロファンとしては心躍る組み合わせですね。