世界と戦う野球少年漫画「リトル巨人くん」レビュー

  • 2018年7月21日
  • 2018年7月21日
  • 漫画

野球は全然詳しくないことを前もってお伝えします、平八です。

 

今夜は小学生がプロ野球の世界で大暴れ、故・内山まもる先生の「リトル巨人くん」です。

 

今ならKindle Unlimited他で全15巻読めますので興味のある方は是非。(2018年7月現在)

 

 

シビアなことを名プレーヤー達を通して教えてくれる

 

前情報として、リトル巨人くんは当世風に言えば一期と二期に分かれています。

 

1976年長島巨人軍の窮地を救うために彗星の如く現れた豪速球のリトルボーイ・滝 巨人(たき きよと)の活躍を描いたのがファーストシーズン。

 

1983年ペナントレースを勝ち切るための切り札を探してアメリカに渡った王助監督を待っていたのは学業に専念するためにプロ野球を引退していた巨人くんだった、というのがセカンドシーズンです。

 

そこらのジャリだった頃の私が読んでたのはセカンドシーズンのコロコロ版で、それ以外にも所謂「小学〇年生」各紙に掲載されていた人気作です。

 

児童紙に掲載されてるくらいだから内容も子供向けなのかな…と思われたあなた。

 

そういう風に決めつけてはいけません。

 

例えば私の好きなエピソードの表紙はこうです。

 

 

11巻より。哀愁漂いすぎ

 

 

内山先生コロコロは児童紙だってこと忘れてませんか。

 

このエピソードでは、当時阪急に所属していたブーマー選手が巨人くんから勧められたハンバーガーを拒絶します。

 

よくよく理由を聞いてみると「昔貧しかった頃安いハンバーガーばかり食べていたから。その悔しさを胸にがむしゃらにプレーして三冠王を勝ち取った」ということなのです。

 

その話に感銘を受けてブーマー選手の猿真似を始める巨人くん、見かけだけ真似てもダメだと諭すお父さん、鬼のようなハングリー精神をもって敵として襲いかかってくるブーマー選手。

 

プロとして生きるとはどういうことか。

 

難しいテーマを子供にも分かりやすく描いた良エピソードです。

 

他にも大人が読んでもドキッとする薫陶が散りばめられていて、大変読み応えがある漫画なのです。

 

このコマなどは色々と考えさせられましたね。

 

5巻。重みのあるセリフ。

 

さすが世界のワンちゃん。(なれなれしい)

 

 

含蓄がありすぎる。

 

 

プロの世界はそんなに甘くない

 

 

チョーさんとワンちゃんが惚れ込んだ逸材なので、基本的に巨人くんは大人達を手玉に取ったり大活躍します。

 

ただしそこはきょじんくんはっさいなので当初はスタミナの問題からリリーフで残り3回を抑えると言った限定的な活躍になっていました。

 

(※物語の途中からこの限界を超えてしまいますが)

 

 

しかしいくら球が速いからって子供にいつまでもきりきり舞いにさせられてはプロの沽券にかかわる。

 

 

なので他のチームは本気で巨人くんを潰しに来ます。

 

 

結果、巨人くんは野球がイヤになって放り出しかけたり色々トラブルが発生するので負け試合も結構あります。

 

 

試合の運びが現実のペナントレースとリンクしていたせいもあるかと思いますが、個人的には内山先生が「勝つということはそんなにたやすくはない」ということを子供達に漫画を通して教えようとしていたのではないかと思っています。

 

 

確かに勝つことは簡単ではない、しかし巨人軍の選手を見なさい、巨人くんを見なさい、皆必死で頑張っているではないか、と。

 

 

中盤あたりからプロの心構えも芽生え、そのけなげなプレイスタイルから巨人くんは巨人軍の精神的支柱になっていき、諸事情により彼が不在になると途端に崩れるという負けパターンも出てきました。

 

最終的に王監督は厳しい修行により、ただ座っているだけでプレーヤー達を発奮させる不動心を会得するのですが、その結末が描かれることなく完結したのは残念でしたね。

 

 

14巻より。得たそうです。

 

 

永遠の少年

 

この作品では実在の人物が登場し、実際のペナントレースとともに時間が流れていきます。

 

ファーストシーズンではフレッシュ感のあった江川卓さんも中畑清さんもセカンドシーズンではすっかり頼れるコメディリリーフに。

 

9巻より。うわっなつかしっ、なネタ。

 

 

特に中畑さんはギャグを入れながら巨人くんを導く役目も担っていたので大変だったと思います。

 

 

13巻。身体を張って巨人くんを導く男・中畑。

 

話はそれましたが、劇中でも確かに時間は流れているのに巨人くんは小学生のまま。

 

物語が始まる1976年当時に8歳と明言されているので順当に成長していればセカンドシーズン開始時にはもう中学生か下手したら高校生になっててもおかしくないし、兄の巨志さんはその間ずっと浪人生です。

 

巨人くんはまあいいとしても兄貴への仕打ちが酷すぎませんか。

 

昔は(今もか)兄のキャラ立てをするために浪人生という味付けがよくされていましたが、浪人って精神的にキッツいんですよ。

 

昔一年だけやったけど、あのポジションを何年もやるガッツが私にはない。

 

話はまたもそれましたが、巨人くんは永遠の少年性を保ったまま最終巻まで駆け抜けて行きます。

 

それはまた自身の引退時に「巨人軍は永久に不滅です」と語った長嶋茂雄元監督の言葉になぞらえているのではないでしょうか。

 

野球全然詳しくないので僭越ではありますが。

 

 

魔の7巻

 

 

先にも少し触れましたが、本作はホームグラウンドのコロコロのみならず各学年紙にも掲載されていた人気作で、単行本化の際はそれらがチャンポンにまとめられています。

 

なので最終15巻は最終回が5パターンも収録されてる。

 

 

15巻もくじより抜粋。一番下が「コロコロ版」

 

 

どう考えてもやり過ぎというか内山先生頑張りすぎ。

 

しかもそれぞれシチュが違うので、仮に男子数人集まって「リトル巨人くんの最終回良かったよなー」という話になったら全員バラバラの話を始める可能性があるのです。

 

いともたやすく行われるえげつない巨人くんの最終回。

 

私的にはコロコロ版最終回の「涙の引退試合」推しですね。

 

子供の頃もらい泣きしたし。

 

前置きはここまでとして(長っ)全15巻通して私が一番引っかかったのは7巻なのです。

 

あまり細かく語ると未読の方のファーストインプレッションが損なわれますのでぼかして書きますが、6巻で巨人くんはピッチャーとして一皮剥けます。

 

おお、ここから更に本格的なピッチャーに成長する物語が…と読者を期待させておいて7巻ドーン。

 

率直に申しますと「俺は一体何を読んでいるんだろう」と錯乱しました。

 

そもそもこの物語のふり出しはアレがああなったから、アレで…えぇぇ?という感じです。

 

何ひとつ分かりませんね、すいません。

 

しかしそんな私を置き去りにするかのように物語は怒涛の展開を見せ、この巻をもってファーストシーズンは終了します。

 

個人的な感想であることを前置きしますが、随分と駆け足に感じましたね。

 

ただひとつ言えることは、セカンドシーズンの小学生ライバル・広島くんと浪花くんって似たようなことをファーストシーズンでもやってたんだなって。(言い方!)

 

 

こちらはファーストシーズン小学生ライバルの一人、人呼んで阪神くんですが現代でも通じそうなキャラデザです。

 

 

魔の7巻より。颯爽登場阪田君。

 

 

まとめ

 

まっとうな大人達が少年を導く成長物語。

 

基本素直な巨人くんも、意外とクソ生意気な一面もあるのでまだまだ危うい存在です。

 

そんな彼を時には優しく、時には厳しく接しながら成長を見守るプロ野球選手達に、我々もまた学ぶところが多い作品です。

 

まあ球団を超えて大先輩達が巨人くんを指導しようとするのは彼の人徳によるところもあるかも知れませんね。

 

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