集まれくすぶり人間!ビターな癒し漫画「ラララ劇場」レビュー

  • 2018年7月22日
  • 2018年7月21日
  • 漫画

不惑にして燻ってます、平八です。

 

今夜はいましろたかし先生作「ラララ劇場」レビューをお送りします。

 

「ああ、俺ってしょうもないなあ…」

 

そんな想いに打ちのめされる夜はありませんか?

 

本作はそんな無力感を抱えた人達を精緻に、かつコミカルに描き切り、エンタメに昇華した怪作です。

 

これを読んだところで何かが解決するわけでもない。

 

しかし読み終わった後、きっと心は癒されているはずです。

 

そういう得体の知れないパワーに溢れた漫画なのです。

 

大丈夫、もがいてるのはあなただけじゃない。

 

 

ダメ人間を見下してない

 

この物語はオムニバス形式で等身大の庶民の暮らしを描いています。

 

「このままでいいのかなあ」という人達に対し特に救済がもたらされるわけではありません。

 

なにしろ短編集なので大部分は投げっぱなしで次に行きます。

 

どこにでもいる小さな人々の滑稽な物語です。

 

しかし、不思議と読後感は悪くない。

 

それは私自身も「劇場」の人達と大差ないせいか、それともいましろ先生の匙加減が絶妙なためか、あるいはその両方でしょう。

 

いましろ先生にお会いしたことはないのであまり失礼な発言は避けたいところですが、先生は人間が誰しも持っているダメな部分を俯瞰し、認めているからこそ淡々と物語を進めて幕引きができるのではないでしょうか。

 

露悪的にならず、コミカルな作風なので読み終わった後はある種の爽やかさすらある不思議な漫画です。

 

特にお気に入りのコマはこれ。スカした盆堀さん。

 

無力感をどうすることもできない盆堀さん

 

 

すごいところを切り取ってくる

 

本作は決まった主人公は存在しません。

 

あえて言うなら複数話にまたがって、学生役からオッサン役までこなす盆堀さんが作品の顔かも知れません。

 

私が感心するのは「よりによってそこを題材にする?」という驚きを常に提供して下さる点です。

 

割と好きなのが「ダウナー系AVショップ店員の日常」ですね。

 

 

覇気がねえ…

 

 

びっくりするぐらいダウナー。

 

深夜帯の店員が自分の日常を語る短編なんですけど何も起こらないし起こす気力もない。

 

パン屋のバイトの女の子にほのかな恋心を抱くも「ありゃ彼氏いるだろ、やめとこ」と自己完結するところとかもどかしさに身悶えしそう。

 

こういうのが心地いいってことは私自身にもそういう気質があるんだろうなと自己分析までしてしまいます。

 

あと、本編とは直接関係ないですけどこの回に出て来るAVパッケージがどれもパンチがきいてるので興味がわいたら是非見て頂きたいです。

 

他にも「子供向けオリジナルソングで一発当てようとする男」「負け組スロッター」「しょうもない話をしてくれるバーのマスター」等々、ダウナーな短編が目白押し。

 

冒頭にも書きましたけどちょっと今の自分に自信を無くしかけてたり、生きる気力がわいてこない時に読むと少しだけ心を優しく撫でられたような気持になります。

 

 

なんと首都崩壊後の話も描かれる

 

 

結局いましろ先生が言いたいのはこういうことなんじゃないかなあと勝手に思っています。

 

 

 

お姉ちゃんの絵がパンチがきいてる

 

いましろ先生の絵は状況によってデフォルメとリアルを使い分けています。

 

ちょっとエロい雰囲気になった時はリアルに寄せていきますが、これが結構特徴的。

 

外国人パブのお姉ちゃんの絵とか「こういう人いそう」感がすごい。

 

 

もっとパンチがきいてるのもあるけどちょっとコードに引っかかりそうなので…

 

 

まあ絵描きは自分好みのネエちゃんを素直に表現してこそだと思わされますね。

 

でも釣れんボーイを読むに、本当にいましろ先生が好きなのは三十過ぎの和風美人だと思う。

 

 

まとめ

 

疲れたオトナに読んでほしい癒し系漫画。

 

昔ビームに連載してた頃は私もまだ若かったので「何か分からんけど妙なパワーを感じる」と思っていましたが、年を取るとその「なにか」が染みて来ますね。

 

個人的にはまたこういう路線の作品を読みたいと思っています。

 

 

 

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