大自然の愛と怒りと哀しみと「ザ・グリーンアイズ」レビュー

  • 2018年12月9日
  • 2018年12月16日
  • 漫画

ほどほどに自然あるところで育ちました、平八です。

 

今夜はあの「ゴッドサイダー」の作者である巻来功士先生が大自然への想いををほとばしらせた「ザ・グリーンアイズ」のレビューです。

 

 

ジャングルの平和を乱す奴らは許せねえ

 


〈あらすじ〉

幸せな夫婦を襲った不幸な飛行機事故。

18年後、彼らの父・蘭妙頼裳が長年探し続けていた墜落現場であるジャングルの奥地に赴く道中奇妙な日本人と遭遇する。

彼こそは夫婦の一粒種にして飛行機事故の生き残り、大自然の使者「グリーンアイズ」だった。

 

 

主人公・広樹(グリーンアイズ)のキャラクター造形として

 

 ・幼い頃自然の中に投げ出された。

 ・力を磨き、弱肉強食の世界を生き抜いてきた。

 ・普段はオールバックのヘアスタイル。

 ・動植物を愛し、ジャングルの大自然のために戦う。

 

 

こうやって抜き出すとスタート地点は徳弘正也先生の「ジャングルの王者ターちゃん」と似ていますが、料理の仕方の違いとでも言いましょうか巻来テイストが存分に滲み出ているため全く異なる味わいの作品に仕上がっています。

 

広樹はニヒルな雰囲気を漂わせつつも基本的にいい奴ですが悪に対して全く容赦しないところがあるのでバトルもののカタルシスも十分。

 

邪悪を倒したら「淘汰完了」とか言っちゃう。

 

「日本のじいちゃん」である蘭妙頼裳が人殺しはいかんと釘を刺したのにあんまり聞いてなかったですね。

 

動植物の力を借りたからノーカン、という発想なのでしょうか。

 

そんな彼の前に立ちはだかる世界征服を企む悪の組織カンパニー。

 

自然を冒涜する悪魔に対抗する広樹と正しい心を持った仲間達。

 

物語の筋はとても分かりやすい勧善懲悪ものなので悪党が淘汰されるところは読んで胸がすく思いですね。

 

興味がわいたあなた。

 

一緒に「こ、この外道ォォォ…」と呟きながら感情移入して読みましょう。

 

 

(一部)動植物の知識に詳しくなる

 

 

ご存知ですか、マニラアサで編んだ布はミサイルの直撃による爆風に耐えるくらいの強度を持っているんですよ。

 

あとアマゾンに棲むジガバチは家畜の内側から喰って成長する性質があるため、細胞をぶち込むと標的を内部から食い破る必殺の武器になる。

 

名付けてインセクトリプレッサー(昆虫細胞制御針)!!

 

今でこそ「ジャケットの中で急成長とかインセクトリプレッサー最初と設定違うやんけ」とかスレたツッコミをしてしまいますが、初読の幼少のみぎりは「アマゾン超こええ…絶対アマゾン行かねえ…」と恐れおののいたものです。

 

このようにザ・グリーンアイズは子供達に恐怖と動植物の知識を植え付ける、非常にためになる漫画でした。

 

オジギソウもだいぶ誇張はされてましたけど説明自体は間違ってなかったと思います。

 

まあやり過ぎると間違った知識のまま成長して赤っ恥をかくこともあるので加減が難しいところではありますが。

 

 

愛すべきキャラクター達

 

 

本作は「ゴッドサイダー」と比較すると巻来先生の肩の力が抜けていたのか、割とひょうきんな描写が見られます。

 

たとえば、最初は敵対しつつも次第に広樹と友情を深めていく生鬼(うぶき)刑事は女性的な自身の名前にコンプレックスを持っています。

 

そんな生鬼の下の名前が明かされた直後に広樹、この笑顔。

 

 

2巻より。生鬼、キレろ!

 

お前のそんな顔初めて見たよ。

 

本作は飛行機事故に巻き込まれた主人公広樹と両親、カンパニーに暗殺されたダーズリー教授の孫娘マリア、両親を殺害された挙句に生物兵器(P4W)に改造された兄妹のように、辛い過去を背負った人々が大勢出てきます。

 

しかし物語のトーンが重くなりすぎないのは主人公達が大自然を救うという大いなる目的、未来のために邁進していることと上記のような茶目っ気が散見されるのが功を奏していると思われます。

 

あと子供の頃に読んで以来、未だに気になっていることがあるのですがサソリの毒を注入されて無惨にもボールのような体型になってしまった仲間の一人、瀬古田さんが巨悪を倒した後元に戻れたとか何の描写もないのがすごいざわつくんですよね。

 

まあ…多分元に戻れたとは思うんですけど「お前はそこにいた方が安全だ」で置き去りにされたままクランクアップして最終回にも出て来なかった。

 

お調子者で戦闘では役に立ってなかったけど涙もろくていい奴だったので何らかの救いが欲しかったところです。

 

 

刺江ちゃんインパクト

 

 

巻来先生の別作品「連載終了!少年ジャンプ黄金期の舞台裏」レビューの時にも言及しましたが、当時少年だった私の心にとんでもない何かを植え付けていった巻来先生の作品群。

 

 

 

 

本作においてはサソリと人間の遺伝子を合成させたP4W(絶対隔離レベル遺伝子合成兵器)の四荷島刺江、その人なのです。

 

すっげえぞ。

 

 

何がすっげえのかは見て判断していただくほかないのが心苦しいのですが、絶対Googleに怒られると思うので本稿で画像を載せるわけには参りません。

 

兄・丈二の服装が普通だったから油断してたのもありますけど度肝を抜かれた。

 

今日びの漫画界隈だと「このくらい普通だよ」と仰る方もいらっしゃるかと思いますが、刺江さんは私に「ボトムレス」という特殊な趣向を植え付けていったニクい女性なのです。

 

ところでこちらはあどけなさの残る18年前の丈二君(4歳)と刺江ちゃん(3歳)。

 

 

3巻より。右側が幼少時の刺江ちゃん。

 

 

そして劇中の現在。

 

 

え…21歳?

 

18年の歳月すげえな。

 

まとめ

 

自然を愛する大地の使者の痛快活劇。

 

日本のじいちゃんが母親に贈った月桂樹のペンダントの量産化にいつの間にか成功していた広樹とかツッコミどころはありつつも楽しんで読めるバトル漫画です。

 

全3巻の本作、この機会にKindle等電子書籍で一気読みというのもオツなものかと思います。

 

 

Kindle Unlimitedなら月額980円で巻来先生の他作品も読めてお得です。

 

 

 

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