鮫を制する者は世界を制する、平八です。
たまたま加入していたケーブルテレビのムービープラスでたまたま第三月曜に「アサイラム・アワー」と称してサメ映画他を放送してると知った時はそれは心躍ったものです。
アサイラムとは「メジャー作品の百分の一の低予算で毎月1、2本の映画を製作する」という素敵なコンセプトの映画会社(本拠地グランデール、社員数約四十名)で、主にアメリカのケーブルテレビのサイファイチャンネルをホームグラウンドにしているとのこと。
「とにかくバッターボックスに立とうぜ」というスピリットは見習うところがありますね。
今回は12月にアサイラム・アワーで放映してたのを今まで視聴を放置してた「鮫の惑星:海戦記(パシフィック・ウォー)」のレビューです。
2017年アメリカ製、原題は「Empire of the Sharks」。
サメ帝国じゃんというツッコミは置いておきましょう。
どうやら「鮫の惑星」という作品の続編なので輸入される際に統一されたのでしょう。
(日本で勝手に続編認定した可能性もあると思ってますが)
世界が水没した黄昏の時代
上記の通り「鮫の惑星」という前作があったようなのですが、最初に著名な建築物が水没した場面がありましたので前情報なしでも大体舞台設定は理解できました。
<あらすじ>
地球の気候変動が原因か、世界は海に沈み、生き残った人類は海上に都市を作り生き永らえています。
そんな中武力をもって人々を従える悪役の手先が主人公ティモールの村を訪れ資源を要求するところから物語は動きます。
いざこざが起こり、友人である少女・ウィローは連れ去られ、ティモールは彼女を助けるべく敵の要塞に乗り込む決意をします。
そこからまあ何やかんやあって仲間を募り、犠牲を出しつつウィローを取り戻し、悪の要塞を打倒して大団円です。
物語の内容が四行に収まったことに驚いています。
流石にちょっと端折りすぎたのでしょうか。
しかしこう言っては本当に失礼ですが、「何やかんや」の部分が結構ダルかったのです。
そもそも人同士の争いがメインでサメがサブに回っている映画なので、求めるものが違うとそうなってしまうのかも知れません。
海の処刑用のタイヤ磔は面白いギミックだと思いましたが短時間の間に何度も同じものを見せられると飽きてしまいました。
もっとこう、血しぶきがバッシャバッシャと飛び跳ねたりする通常のサメ映画が観たい方にはこちらをお勧めします。
(お急ぎの方はここだけお読み下さい)一番楽しめた鮫使い同士のせめぎ合い
正直90分近い物語の中でここが一番面白かったので、時間の無い方はここだけ観ても特に問題ないと思います。
(時間で言えばラスト15分くらい)
文明の利器で鮫を操る首魁イアン・フェインと鮫使いの力に目覚めたウィローの激しいバトル。
と言ってもお互い鮫のコントロールを奪うために両手を突き出して「ハッ!」「フンッ!!」と気合を送り合い、鮫がどっちにつけばいいのかウロウロしているというあまり締まらない絵面なのですが、私の中では作中で一番盛り上がりました。
それ以外に一番カロリーの高い映像と言えばカミカゼ・ザメ(大丈夫かこの名前)という武装鮫がティモール達の船を木っ端みじんにするところでしょうか。
とにかく両腕に面白いグローブをはめたイアンのアクションはちょっとだけ真似したくなる衝動に駆られます。
そしてラストシーンで鮫使いの能力に目覚めたウィローは訳知り顔のおばさんから祝福を受け、伝説のオールを手渡されます。
この時点で何それという気持ちになるのですが唐突に鮫使いの儀式が始まり、その光景を背景にティモールと相棒シオンが呑気な会話をして幕を閉じます。
鮫使いの儀式が湯もみみたいでちょっと面白かったです。
ウィローの顔が何となく早く帰りたそうに見えるのも印象的でしたね。
今まで囚われてて疲れてんだから休ませてやれよという感想も出てきます。
鮫の出番が少ないのは難点か
上でも書きましたけど、実はこれ「ウォーターワールド」とか「翠星のガルガンティア」みたいに人類の黄昏を生きる人々の物語がメインなんですよね。
自然鮫の出番は減るというか、敵陣営が鮫を囲っているのでそれなりの数は出て来るもののパンチのきいた絵は少ないです。
鮫に喰われるシーンも結構役者の演技力に頼るところが多かったり。
(喰われてるのに血も出ず、ただ溺れてるだけのように見える場面もありました)
なので鮫がバッシャバッシャ暴れる映画を求める方にはあまりお勧めできないです。
海水を真水に変換する装置を人力で駆動するなど、なんちゃって世紀末感はそれなりに出てますのでそういうのを楽しみたい方にはよいかも知れません。
敵の幹部が何故か上半身裸に皮ベルトを巻いたマッチョ二人を引き連れていて何だこの北斗の拳ワールドとツッコミたくなります。
後はまあイアンと配下が使う鮫を操るパワーグローブみたいなのに、どこまでロマンを感じられるかがこの映画を気に入るかどうかの分かれ目だと思います。