アニメ版だと好きなキャラはウルスラです、平八です。
今夜のレビューは実写版魔女の宅急便です。
「何故今更…?」と疑問に思われた方もおられるかと思いますが、「邦キチ!映子さん」に影響を受けたためです。
アニメ版はかなり上位に来るくらい好きな映画だということを先にお伝えして、レビューをさせて頂きます。
※本稿はネタバレを含みますので、未見の方はご注意下さい。
キキの成長と青春
正直「何これ…」って言いたくなるようなひょうきんなシーンとか割とありますけど、アニメ版同様少女の成長物語として結構面白かったです。
キキの実家が山岳地帯の秘境みたいなところにあることや、魔女の子供は成長する過程で魔女として生きるか人間になるかを選べるというアニメ版しか知らない私にとっては初めて聞く情報に少したじろぎますが、もしかして原作にはあるんでしょうか。
こちらの実写版は原作準拠とのことなので、そうした描写も原作に沿っているのかも知れませんね。
さておき、キキは魔女として生きることを選び、生まれ育ったメテオラみたいな実家を旅立ち、見知らぬ町へたどり着きます。
アニメ版のようなシャレオツな町ではありませんけど海に面した牧歌的な町でパン屋を営む若夫婦の家で下宿をさせてもらい、自分の能力を活かして配達業を始めるというところまではもう何回観たか忘れたくらいの流れだったので失礼ながら軽く眠気を誘われました。
しかしこの辺りから少しずつ変わってきます。
町の人達に認められて徐々に馴染んでいこうとする最中、実は百年前にも魔女がこの町を訪れていたことが判明し、その折も魔女を受け入れる派と魔女を恐れる派の住民に分かれたというのです。
確かに、冷静に考えてみたらよく分からない動力で空を飛べる少女とか怖いかも知れない。
住民だって「まさかそれしか特殊能力がない」とは夢にも思わないでしょうし。
で、不幸の手紙事件から何か急にドロッとした展開が続いて、自分はちょっと胃が痛かったです。
魔女の噂に怯えたこれまでの依頼主から配達した荷物を全て突き返されたり、パンを持って行ったのに金を手渡しじゃなくて軒先に落とされたり。
魔女への当たりが強すぎる。
おソノさんはこんな時こそ働かなきゃダメだとか言うスパルタだし、逃げ道がねえ。
オラこんな町嫌だってなる。
という風に、キキに大変感情移入してしまうという意味では優秀な展開だったのかも知れません。
トンボの男前ぶりに惚れろ
まあ序盤のトンボは結構ウンコみたいなことやらかすんですけど。
あれはちょっとひどいというか、普通にタイム測らせてくれって何で言わないんだと思いました。
トンボの弟達もキキの大事なホウキと知りつつパクっておいて、割と健脚なキキに捕まると「ちょっと借りたかっただけ」とかほざくウンコみたいなガキでこの辺も胸がムカムカしました。
お前らのせいで島中走り回らされたんやぞ!!
なので、問題のシーン「トンボがキキを突き飛ばす」もキキが行きがかり上意地悪くなっただけで「元はと言えばお前(トンボ)が悪いんだろ」と思ってしまう展開でした。
そんな年相応にヤンチャだったトンボ君もある事件をきっかけに態度を軟化させ、急に日本の青春映画みたいな絵作りになって誰もいない校庭でお互いの悩みを打ち明け合ったり自転車の練習をしたりします。
死ぬほど自転車に乗るのが下手なキキを指導するシーンがそこそこ長いので「これ何の映画だったっけ?」と危うく忘れかけますが、苦労のかいあって自転車に乗れるようになるキキ。
そこでトンボ君
「自転車は一度乗れたら一生乗れるんだって」
からの
「また飛べるよ…だから、魔女やめるなよ」
そう言い残して去って行くトンボ。
カッコいい。
ここのシーンは全体通しても結構好きです。
嵐の中でとっ散らかるクライマックス
ここは出来れば前情報なしで観たかったですね。
なのでこの映画を未見でここまで読んでしまったという方はこの先を読むことはおススメしません。
あなたのファーストインプレッションを大事にしたい。
「いいよ、別に…」という方はこの先へどうぞ。
カバの子供の病気が治らないため、海を隔てた島に現れた放浪の医者に診せたいという動物園園長の依頼を受けるキキ。
嵐が来てるのにな。
大人が躊躇するほどの嵐の中を子供に荷物運びさせようとかどんな判断だと思いますね。
さておき、カバの子供を送り届けるために飛び出していくキキとサポート役のトンボ。
ラジオを通じて町民に伝えられる状況。
今まで触れ合った人達がキキを想って気を揉んでるシーンは結構アツいです。
そしてクライマックス。
高度が取れていなかったためにホウキから吊り下げたゴムボートに岩壁が迫って来る。
それを華麗なジャンプと力技でクリアしたトンボのファインプレイ。
ここは思わず手に汗握るシーンに仕上がっています。
しかし疲労で意識を失いかけるキキ。
そんな時、嵐の中から歌が聞こえてきます。
キキがこれまでの暮らしで触れ合ったひとり、タカミ・カラの歌声が。
彼女は魔女だった姉の死のショックのせいか歌が歌えなくなっていたのですが、ギリギリ聞き取れるくらいの声量で話すので演技に説得力があります。
そんな彼女がキキの勇気に背中を押され、嵐の庭に出て全力で歌い始めます。
その姿と歌がパワフルすぎて、さっきのトンボの殊勲賞ものの活躍が上書きされるくらい空気がガラッと変わります。
忙しいなこの映画。
雨にメッチャ打たれながら熱唱するシーン、必要だったんだろうか…と疑問は残りますけど少なくとも私のハートを鷲掴みにするくらいにはインパクトがありましたね。
作家・角野英子の思い入れ
原作者である角野英子先生は2014年3月の公開時には御年79歳でいらしたのですが、ナレーションとカメオ出演もされています。
上の方でも書きました、キキから配達されたパンを受け取る時に金を放り投げた客です。
何でこんな役引き受けたんだろう。
うわっ感じ悪っと初見で思ってしまったので、あまりいい役どころとは素人目にも思えません。
しかし30年近くかけて完結した作品ともなると思い入れも私のような部外者の想像の及ぶところではないのかも知れません。
どういう形でもよいから作品の中の人物になってみたい。
そうした思いがあったのではないかと推察します。
ただこの映画、エンディングテロップを見て頂くとお分かりでしょうが登場人物の大半にネーミングがされているのでちょっと観ただけでは何役か分からなかったと思います。
私は「ジジの声を当てているのはキキ役の小芝風花さんでは?」という仮説を立ててエンディングテロップを眺めていたので「角野英子」の文字に気づいたのですが。
ほんのチョイ役の人にも名前がついているのは原作準拠なんでしょうね。
まとめ
アニメ版とはまた違った引力のある映画。
私のような錆びついたおじんの胸にも色んな感情を呼び起こした作品ですので、何か不思議なパワーを秘めていることはお伝えして本稿を締めさせて頂きます。