青春のオトシマエ「シン・エヴァンゲリオン劇場版」レビュー

ファーストエヴァ世代でしつこくついてきてました、平八です。
 
今夜はついに完結「シン・エヴァンゲリオン劇場版」レビューと今までのあれこれを綴らせて頂きます。
 
なお、ネタバレその他に関しては極力控えるつもりですが基本的に「視聴した方向け」の記事になっておりますので、未見の方は自衛をお願い致します。
 
 
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世界を巻き込んだ少年時代の卒業物語

 
 
観終わって劇場を出る時、春先のとてもいい天気だったこともあるんですけどすごくスッキリしましたね。
 
細かいところは後述しますが「Q」のラストからこんなに爽やかな終わり方になるとは思ってなかったのでいい意味で裏切られて晴れやかな気持ちになりました。
 
というか「Q」があんな感じだったからまた旧劇の時みたいに何とも言えないドロッとしたものを持って帰らせてくれるのをちょっと期待してたのもありますが。
 
実は本作を観に行く前日に旧劇場版(シト新生・Air+まごころを、君に)を一気視聴して青年時代のテンションに戻しておこうと画策したのですが思ったより気持ち悪くなって「Q」で口直しをしたという経緯があり、その頃のあれこれも一緒に思い出して観る前から身構えていたというのもあります。
 
多分旧劇場版の頃は若くて体力あったから耐えられたんだろうな。
 
さておき、本作は一般層が盛り上がれるエンタメあり、私のような旧世代者にも嬉しいサービスあり、涙あり笑いあり、庵野監督こういうのやりたいんだろうなと駄々洩れになった監督の欲望ありとものすごく欲張りな内容になっていてしかもそれが良くまとまっており、2時間半もあるとは思えないほどあっという間に時間は過ぎていきました。
 
特にゲンドウの本音が爆裂するとことか「こんなん映画館で流すなや!!」とちょっと思いましたけどそれでも視聴の流れが出来ていたせいかするっと観られたのが本当にすごい。
 
繰り返しになりますけど旧劇場版を直前に観ていたため図らずも比較してしまったというか、この20年余りで監督の技量が長足の進歩を遂げていたことを改めて実感しました。
 
こんなに立派になられて、俺も鼻が高いよ。(後方プロデューサー面)
 
で、色々ありましたけど結局は見出しにも書いたように「少年期の終わり」がメインテーマになっててそこがちゃんと描けてたのが満足度が高かったのもあるかなと思います。
 
自分の殻に閉じこもった少年が他人に助けられ、人の優しさを知って立ち直り、成長して自分の道を歩いていく。
 
復活を盛り上げるためのタメの期間だと分かっていても本当にあの序盤はイラッとしましたね。
 
一足先に大人になってしまったアスカさんと視聴者がシンクロする見事な構成だったと思います。
 
 

人はひとりだけどひとりでは生きていけない

 
 
言葉にするとやや陳腐な表現になりがちですが、本作の序盤でそれを説明臭くなく表現していたのがとても好きです。
 
私はひねたオッサンオタクなので「あんな防御壁を用意する時間がどこにあったの?」とかいやらしいことをちょっと思ったりもしますが序盤のあの牧歌的かついつ崩れるか誰にも分からない危うい世界が監督の描きたかったもののひとつなんだろうなと痺れながら観ていました。
 
正直冒頭の大太刀回りからして本作は基本バトルで構成されるものと思ってましたのであんなに時間を使って(と言っても視聴中は時計を見てないので体感的に)じっくり村の暮らしをやるとは思ってなかったのですがあそこがあるからこそ復活のシンジの説得力が出たと思います。
 
前作で友人の前で爆死という壮絶な最期を遂げた渚カヲル氏の言った通り縁がシンジ君を導いたわけですね。
 
また、はっきりしたことは言ってなかったものの「まあそうなんだろうな」と思っていたアスカ氏の身上が判明し、もう輪の中には戻れないけどその輪を守ることで自分がヒトだったことを忘れないでいようと孤独な努力を続けているのがひどくしんみり来ました。
 
前作はずっとカリカリしてたので本作でその理由を解き明かしてくれて満足です。
 
あとやっぱりミサトさんに泣いちゃうよね。
 
鈴原サクラ氏慟哭の一撃のところとか「あぁ…」と思って体がぶるっと震えちゃって。
 
後ろの席の人に気づかれたかなと恥ずかしかったですけど、あそこは涙腺に来たわ。
 
そして「やっぱりQの説明不足は尋常じゃねえな」と認識が強まりました。
 
でもまあ「序」「破」の完成度が高いのは言うまでもないけどそれはそれとして私が好きなのは「Q」なんですよ。
 
あの説明不足が全て本作への前振りだったと思うとやられた!という気持ちが先に来ます。
 
 

永遠のサービスマン、庵野秀明

 
 
新劇場版シリーズしか知らない若い世代はその映像の持つ熱量に圧倒されたでしょう。
 
我々オールドファンは「あのシーンの再現ですな、ウッヒヒ」と気持ちわりい笑みを浮かべながら同じものを観ていたりします。
 
繰り返しになりますが前日に旧劇場版を視聴していたので記憶が新しく、あのシーンを持って来た、このシーンも!となり庵野監督のサービス精神に心の中で喝采を送りました。
でもあの巨大綾波はちょっとひどくないですか監督。
 
なんで旧劇場版みたいに手描きで「デカいけど可愛い」リリスにしなかったんですか。
 
「気持ち悪い上にデカい」ってどういう精神状態であれをやろうと思ったんですか。
 
それとちょっとサービスが行き過ぎてるところもあったというか女性陣の際どいカットも結構多く感じましたね。
 
私が行った回では多分中学生ぐらいの男子とかも来てましたのでなかなか気まずかったのではないかと。
 
ただ、上の方でも言ってますけどそういう顧客向けのサービスを充実させた上で最初の観客である自分を満たすためのサービスカットというかやりたい放題も入れて来るのが監督の成長を実感できました。
 
「ここは裏宇宙だから何でもありなんですけど?」というヒゲ面のドヤ顔があのシーンでチラつきましたね。
 
それを言われたら何も言えんし。
 
 

芽生える新たな謎

 
 
いやまあ教えてほしかったところは知れたのでそこまで気になってるわけではないのですが。
 
結局お前ら何なん?というのもいくつかありますけどネブカドネザルの鍵なんてもうフレーズも出て来ないんだろうなと思ってたからちょっと嬉しかったし。
 
でもお父さんを送り出してこちらもちょっと気が緩んでたからあそこで更にぶっ込んでくるとは思わないじゃないですか。
 
「え?何?どういうこと?」となったまま終わったし。
 
なんなの司令って。
 
パンフも声優インタビューがウェイト大きくてあまり欲しい情報なかったしもう一回観に行くかいずれ出るであろう完全謎解き本みたいなの待つしかなさそう。
 
 
こんなこともあったと振り返れる日が来ることを願って
 
 
しかしやっぱりカヲル君そういう感じなのかって思いましたね。
 
あの子繰り返すたびに「そういうことかリリン」って毎回騙されてそう。(例「みそ汁のお出汁が違う…そうか、そういうことかリリン!!」)
 
ネットで「やっぱり知恵の実を食べてないからだな」という意見を見かけて酷いけど笑ってしまいました。
 
 

昔の話をしよう

 
 
※この項はおじさんの懐古文章なので飛ばしていただいて結構です。
 
TV版、旧劇場版が昔話になった2000年代後半に新劇場版やるよという話があって、既にいい年になっていた自分は一線引いた気持になっていました。
 
それはそれとして「序」公開時初日に観に行ったんですけど。
 
「破」を観る頃には「ああこれは若い子達のためのエヴァだ」と気持ちを固めてました。
 
過去に自分達の世代を熱狂させた作品がリブートして新たな客層を掴んでいくのを遠巻きに眺める気持ちになっていたんですね。
 
で「Q」が来て「あれ?俺もここに居ていいの?」と急に手招きされた気になって頭をかきながら気持ちが寄って行きました。
 
そこからは「序」が2007年公開で、その頃から14年経ってて「序」で初めてエヴァに触れた人もいい年になってるだろうしそれならもっといい年した自分も混じっていいよね!とちょっと浮かれながら本作を待っていました。
 
しかし旧劇場版の頃ですら一日千秋の思いで待ってたのに「序」から14年、「Q」からでも8年ちょいってとんでもなく時間かかってんな。
 
私らの若い頃は半年でも待ちきれなかったですよ「Air/まごころを、君に」
 
あーやっぱここで続くかー!!と当時のオタク仲間達と嘆くふりして笑い合ってました。
 
「シト新生」の時はTV版の熱気も冷めてませんでしたので、前売り券欲しすぎて劇場チケット売り場に仲間達と夜中から並んだりしましてですね。
 
今考えると完全に無駄で無闇な行為だったのかも知れませんけど私らのグループ以外にも結構並んでてそれがワケもなく嬉しくて、夜が明けるまでとりとめなく話し合ったりあんなに楽しい夜はなかなかありませんでした。
 
劇場周辺の石の床に腰かけてて尻も痛くなったし時期的にまだ寒かったはずなんですが、楽しかったことしかもう思い出せません。
 
あの頃の仲間とはもう連絡も取り合っていないのですが、それからもウンコみたいな謎本つかまされたり(当時は本当に色々出てた)、「新世紀エヴァンゲリオン2」といういかにもなタイトルのゲームをプレイしてどうあがいても人類補完されたり、当時エヴァを知らなかった友人がパチンコからハマった時に「ほほう、ようやくお目に止まりましたか」と完全に高慢な古参気取りムーブをしたこともありました。(これは本当に恥ずかしい)
 
そういった色々ひっくるめて「楽しかった」と感謝したいです。
 
 

ありがとう、そしてさようなら

 
もっとごちゃついた、最悪またどっかにぶん投げられることも期待してたのでこんなにスッキリと終わらせてもらえたのは嬉しい誤算でした。
 
個人的に観終わった後に「明日も頑張ってみるか」と思えたので本作はまた長く自分の記憶にとどまることになると思います。
 
そして、ちょっとネタバレというか表現的な部分なのですが槍で落とし前をつける時に全てのエヴァタイプがいつの間にか直列になってて焼き鳥みたいに串刺しになっていくのを見て「もうこれで全部終わりでいいだろぉぉぉ!!」という庵野監督の魂の叫びを聞いた気がしましたので「ウッス!!自分もう腹いっぱいッス!!」と返答させて頂きます。
 
ウルトラマンは昭和版くらいしか知らないので「シン・ウルトラマン」は行けたら行く、ぐらいの言い方しかできませんが、庵野監督の今後のご活躍を心からお祈り申し上げます。
 
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