原作にハマってた頃まだ学生でした、平八です。
今夜はついに実写化した「劇場版ノーマーク爆牌党」のレビューです。
公式ホームページ。視聴環境によってはいきなり予告編が始まるのでご注意下さい。
初日の舞台挨拶も見てきましたのでそちらについても言及します。
※本稿はネタバレ感想となりますので閲覧の際はご注意下さい。
爆守備で守りたいもの
本作は大雑把に言うと原作全9巻のうち、5巻くらいまでの内容を取捨選択して再構成した実写化です。
アマチュア大会を連覇し、三連覇に向けて調整中の大学生・鉄壁保の前に謎の闘牌・爆牌を繰り出す爆岡弾十郎が現れ…という風にキャラ設定も一部異なっています。
大まかな流れは原作に沿っていますが本作は特に鉄壁の心の揺らぎにクローズアップしており、結構すぐ折れます。
そんな彼を支えるのが大介と宝燈美。
原作では鉄壁のメンタルケアは大体宝燈美ちゃんの役目でしたが、本作は大介が結構細かいことに気配りができるいい奴になってて、そこが良かったですね。
本作で印象深かったのは鉄壁が爆岡に大会で打ちのめされ「俺別に麻雀にそこまで入れ込んでねーし」と就職活動を始めてしまう時に大介が「本当にそれでいいのか、お前の守りたいものってなんだよ」と鉄壁の心に楔を打ち込むのが大介だったところです。
おお、大介がちゃんと友達してると。
こういった描写のおかげで、本作は麻雀漫画をベースにしつつ青春ドラマのような側面も感じ取れます。
というか原作読んでて「鉄壁が爆守備によって何を守っているのか」とか考えたことなかったので、その点をクローズアップしたことが新鮮で、何十年も経って新たな課題を貰ったような気がしました。
上記のセリフは爆岡とのラスト半荘でもフラッシュバックしていたので、監督のテーマとして結構重要にとらえているのでは、と思います。
舞台挨拶では大介も結構いじられてましたけど麻雀シーンの解説もするなど本作では「爆岡が何をやってるのか理解してる」節もあるので原作通りのポンコツではなかったですね。
高崎翔太さんが大介役にしてはハンサムすぎる気もしましたが、彼のシュッとした立ち振る舞いも見どころだと思います。
闘牌に浮かび上がる演技
観る前に気にしてたのが「闘牌シーンをどう表現するか?」という点でした。
プロアマ問わず、打ち慣れてる人間なら牌さばきもサマになってないと…と何となく思っていたのですが、本作では鉄壁がモッサリ闘牌することで慎重さ、臆病さを表現しています。
これは盲点でした。
河に捨てる時の動作のゆっくり度合がややオーバーすぎる気もしましたが表情も相まって鉄壁のキャラが十分に出ていました。
鉄壁役の矢本悠馬さんは本作で初めて知りましたけど、画面に映った時の「あ、気弱そう」というインパクトはすごかったです。
普段のルックスや言動から弱々しいイメージを抱かせるし、闘牌もちょっと自信なさげに行う。
映画全体を通して鉄壁、というキャラをガッチリ作っていると感じました。
何でそこを変えたんだろう
爆岡と鉄壁はアマチュアのまま原作で言うところの達人戦(本作での名前失念)に挑むので細部が異なります。
例えば
・万利休(出番短いのにやけに存在感がある)の推薦で爆岡が大会に参加。
・鎌板地プロが急に出てやけに存在感がある。
・堀江さんの肩書きがプロに変わっている。
・ひっそりと岩田プロが足切り。
最後、何でそうなったんだろ。
展開もだいぶ変わってたから別に岩田プロが足切りになってもならなくてもどちらでもいいような展開ではあったけど、何か理由があってああいう風にしたのかと考えてしまいます。
確かにガタイの割に驚くほど発声が大人しいから芝居苦手なのかな、とは思いましたが。
あと鎌板地プロの見た目が結構インパクトあるのでいきなり出てきて存在感を発揮されていましたね。
もっとゴリゴリのストロングスタイルなのかと思いきや原作通りの速攻タイプだったので。
あと当然かもしれないけど、どら道楽のマスターがカッパじゃなくて人間で、語尾に「アル」って付けない。
あそこでカッパが出て来たら面白過ぎはしましたがコメディ色が強くなるから普通の人間にしたんでしょうかね。
でもマスターの役者さんがジェントルさん。
結構有名な方らしいのですが寡聞にして存じ上げませんでしたので、ラストのスタッフロールで突然名前が出てきてビックリした。
「ジェントル」とだけ役者の中でも結構上の方にクレジットされてたので「何それ何それ」と気もそぞろになってしまいました。
また、本作の最後の最後に「あー尺が短いからカットされたんだろうな」と思われた茶柱、八崎両プロが名前だけポッとぶっ込まれて「続編を視野に入れている?」と思わせてくれます。
初日舞台挨拶
幸運にもチケットが取れたので本編終了後に挨拶も観ましたが、結構面白かった。
今まで舞台挨拶とかあまり興味なかったんですけど今度から行ける時は行ってみようかなと思えるくらいには楽しかったです。
爆岡役の石田明さんがおしゃべりが達者なのは予想はしていましたが、役者さん皆トークが上手でした。
特に「誰なんだジェントル」と私の中で謎の人物だったジェントルさんの仕切りが巧みだったのでいくらでも見ていられるような気がしました。
特に面白かったのは「矢本さんは普段結構オラついてる」ということを高崎さんに暴露され、事あるごとに皆で肩で風を切って歩く真似をしていたところですね。
役者さん達仲良さそうというか、楽しい現場だったんだろうなと想像できました。
それ以外にも「矢本さんと高崎さんは麻雀やらないのでプロに教わりに行ったり仕事の合間に牌を握ってトレーニングしていた」「石田さんは派手に勝たないけどトータルだと結構な額浮いてて仲間内で嫌がられた」「他のキャストが劇中の姿で登壇したのに宝燈美役の長澤茉里奈さんは見たことないようなキラッキラした格好で現れて総ツッコミ」「富澤監督舞台上でガッチガチに緊張」等々、劇中では超シリアスだった舞台裏を見られて得した気分になりました。
爆牌シーンの苦労話(何もないところで怯んだ演技をして、後で爆発シーンを合成)などもあり、これらの知識を入れた上でまた本編を見返すと違った発見がありそうですね。
まとめ
これからの鉄壁がどういう道を進むのか、というところが気になる映画でした。
そういう意味では本作は序章のようなイメージですね。
あとやっぱり爆牌シーンのインパクトがすごい。
最後の方、宇宙を創ろうとしてんのかってくらい気合い込めて打つので。
海鼠プロじゃなくても爆牌のタイミング分かるよって感じでした。